なぜなぜ分析とは?

 「なぜなぜ分析」とは、「なぜ」を繰り返しながら、問題を引き起こしている事象の要因を、思いつきで挙げていくのではなく、論理的に漏れなく出しながら、狙いとする再発防止策を導き出す方法のことを言います。まるで、子供が親に「なぜ?」「なぜ?」としつこく問うように、「なぜ」を繰り返していく形で、発生原因を掘り下げていきます。現在では、売れる要因や消費者からの問い合わせの深堀など、トラブルの原因追究以外にも多く使われるようになりました。

 

なぜなぜ分析

 

 この手法は、ブレーン・ストーミングのように皆で意見を出し合い、関連のある事柄を結び付けていくQC七つ道具の特性要因図や新QC七つ道具の連関図とは違い、狙いに沿って論理的に一つひとつ掘り下げていく手法です。

 

 普段から私たちは、論理的にモノゴトを考えているようで実際は論理的に考えていません。管理職も含め日常の仕事のほとんどは、経験や知識との照らし合わせの上で行われているからです。

ほとんどの人がいざ「なぜ」を繰り返そうとすると、なかなか的確な「なぜ」を出すことができません。

当社では、的確な「なぜ」を引き出すにはどうしたらよいか、という単純な問いについて、長年多くの企業での実践指導を通じて研究し、現在まで続けてきました。

 

 近年の成果は、2009年3月に発刊した「なぜなぜ分析10則」(小倉仁志著、日科技連刊)にまとめました。1997年に発刊した「なぜなぜ分析徹底活用術」(小倉仁志著、JIPMソリューション刊)と上述の書により、設備に関するトラブルから人為ミス(ヒューマン・エラー)まで幅広く対応できる「なぜなぜ分析」の定石がまとまりました。

▲ Page Top

なぜなぜ分析の事例

 なぜなぜ分析の事例として、「釣竿が折れた」という事象をとりあげました。

 問題を引き起こしている事象の要因に対して、下図のように「なぜ」を繰り返していく形で、発生原因を掘り下げていきます。

※図中のボックスをクリックすると問題を掘り下げていきます。

  • なぜ「釣竿が折れた」のか?

  • なぜ「釣竿の強度を越える力が加わった」のか?

  • なぜ「許容以上に釣竿が一気に曲がった」のか?

    • ⇒「魚の動きに合わせず、無理やり釣竿を引き上げようとした」から さらに「なぜ?」
  • なぜ「買った時に比べて、釣竿の強度が低くなった」のか?

  • なぜ「魚の動きに合わせず、無理やり釣竿を引き上げようとした」のか?

    • ⇒「魚が掛かった後の釣竿の引き上げ方を知らなかった」から 対策は?
  • なぜ「竿の表面の塗装がはげている」のか?

    • ⇒「竿をいつも屋外に置きっぱなし」だから 対策は?
  • 「魚が掛かった後の釣竿の引き上げ方を知らなかった」ことへの対策は?

    • ⇒「魚の引き上げ方について、師匠に教えを請う
  • 「竿をいつも屋外に置きっぱなし」ということへの対策は?

    • ⇒「竿を屋内に保管する
なぜなぜ分析の事例
事例(事象「釣竿が折れた」)
事例(なぜ1「釣竿の強度を越える力が加わった」)
事例(なぜ2「許容以上に釣竿が一気に曲がった」)
事例(なぜ2「買った時に比べて、釣竿の強度が低くなった」)
事例(なぜ3「魚の動きに合わせず、無理やり釣竿を引き上げようとした」)
事例(なぜ3「竿の表面の塗装がはげている」)
事例(なぜ4「魚が掛かった後の釣竿の引き上げ方を知らなかった」)
事例(なぜ4「竿をいつも屋外に置きっぱなし」)
事例(再発防止策「魚の引き上げ方について、師匠に教えを請う」)
事例(再発防止策「竿を屋内に保管する」)

 この事例のように、論理的に問題点を分析していき、再発防止のための本質的な改善策を見出すのが「なぜなぜ分析」です。

▲ Page Top

なぜなぜ分析10則

 「なぜ」を的確に繰り返していくためには、囲碁や将棋と同じようにコツ(定石)が要ります。

 

 まず、「なぜ」を繰り返す前に、当たり前のことをしっかりやっておかなければなりません。意外にこれらができていないにもかかわらず、「なぜ」の繰り返しに入ってしまうケースが多いようです。

 

なぜなぜ分析に入る前に勝負は決まる?!

事前チェック① 原因追求と対策を要する課題の抽出

事前チェック② モノゴトを見極めて絞り込む

事前チェック③ 分析する事象の表現に気をつける

事前チェック④ 原因追求すべき対象をしっかり把握する

事前チェック⑤ 前提条件を確認する

 

 準備ができたら、「なぜ?」を、まさに論理的に、しかも漏れなく、そして狙い通りに繰り返していきます。ただし、「なぜ」を表現したり、繰り返していく上で、多くの落とし穴が待っています。それら思考の落とし穴を避けながら展開していかなければなりません。

 

 囲碁や将棋といったゲームと同じように、頭の中で、出てきた「なぜ」のつながりを局面ごとにパターン化し、そのパターン化した「なぜ」が別の事象で「なぜ」を繰り返す時にスムーズに出てくるようになるまでには、それなりの場数が必要です。

 

「なぜ」の繰り返しを、論理的に、漏れなく、狙い通りに展開するための定石

第1則:「現象」や「なぜ」は、ワンカット表現にする

第2則:出だしの「なぜ1」は発生部位・形態に着目し、発生原則(条件)をもとに表現する

第3則:逆に読み返しても、順序良く論理がつながるように「なぜ」を展開する

第4則:並列の「なぜ」が全く発生しなかったら、前の「なぜ」は発生しないかをチェックする

第5則:分析の狙いを踏まえた「なぜ」を展開する

第6則:誰もが同じイメージできる「なぜ」を表現する

第7則:形容詞を使う場合は、比較の対象を明確にする

第8則:個人的な話(臨床心理面)には「なぜ」で踏み込まない

第9則:再発防止策が見出せるまで「なぜ」を繰り返す

第10則:現場・現物で「なぜ」を検証する

 

 詳細については、ここでお伝えできる分量ではありませんので、ぜひ「「なぜなぜ分析10則」(小倉仁志著、日科技連刊)をご覧ください。

▲ Page Top

なぜなぜ分析の進め方

 「なぜなぜ分析」に入る前に、事前チェックの①から⑤を踏まえて、以下の1から3まで進めていきます。事前準備に欠落が生じると、「なぜ」でも欠落が生じることになります。情報収集や対象とするモノゴトの理解に漏れがないよう、しっかり取り組みましょう。

 

 準備がほぼできた段階で、「なぜ」の繰り返しに入っていき、対策(再発防止策)案が出てくるところ(狙い通りの対策が出てくるところまで)まで「なぜ」を繰り返していきます。

見出された対策は、評価した上で、実行に移します。

 

 実行されるべき対策は、職場・業務・作業・設備などに内在する弱点の改善そのものです。分析の対象になったところだけを改善するのではなく、類似の改善が必要なところは全て対象とし、総点検(一斉点検)を実施し、当てはまるところは積極的に改善していかなければなりません。それにより、現状の一歩先にとどまらず、二歩も三歩も先の仕事ができるようになるはずです。

 

なぜなぜ分析の進め方

1.課題の抽出と事象の絞込み

2.分析目的の明示

3.分析対象の理解・把握

4.前提条件の確認

5.分析と検証の実施

6.再発防止策案の立案と評価

7.再発防止策の実施と効果の確認

8.総点検と横展開

▲ Page Top

小倉仁志の「なぜなぜ分析」 ちょっとしたコツ

?「なぜなぜ分析」の応用に役立つちょっとしたコツやポイントを書き記したものになります。皆様のご参考になれば幸いです。

 

※題名をクリックすると、PDFファイルを閲覧することができます

 

第37回 「なぜなぜ分析」での事象の捉え方

第36回 「なぜなぜ分析」実施時に当事者を参加させるべきか

番外編 なぜなぜ分析10則、2007年版

第35回 「見逃し」の「なぜ」について

第34回 「OO不足」に気をつけよう!

第33回 「なぜ」を考える場合は、4M+1Eを考えよう

第32回 分析前に前提条件(事実のみ)をリストアップしておこう

第31回 設備の場合は、対象部位のパラメータを予め整理せよ!

第30回 「忘れてしまった」についての「なぜ」

第29回 要因漏れをなくすにはどうすればよいか

第28回 製造条件などのバラツキの原因追求は要注意!

第27回 ヒューマンエラーの基本的な考え方と「なぜ」の小技

第26回 「動詞」の中味に目をつけよう

第25回 物のつながりを意識して「なぜ」の展開を(パート2)

第24回 「なぜなぜ分析」と「どうする分析」

第23回 ヒューマンエラーを「なぜなぜ分析」する際のキーワード

第22回 「現象」を表現する際に、総称言葉に気をつけよう

第21回 「~が悪い」の放置は高品質づくりの障害になる

第20回 ただ単に「~が合っていない」は気をつけよう

第19回 どの「時点」で発生したかを分けてから分析に入ろう

第18回 複数の人や組織が絡んでいる場合は・・・・

第17回 本来の進め方ではないやり方を見逃すな

第16回 維持管理や技能伝承につなげるために

第15回 まとめて表現してはダメ

第14回 よくある「入力間違い」の展開

第13回 物事のつながりを意識して「なぜ」の展開を!

第12回 判りやすくダイレクトな表現で!(その2)

第11回 「現象」は事実だけしか書いてはいけない

第10回 なぜなぜ分析の評価項目

第9回 判りやすくダイレクトな表現で!

第8回 発生部位に丸を描いて、「なぜ1」を考える

第7回 分析実施後の横展開について

第6回 ヒューマンエラーの際の「なぜ」の矛先

第5回 あくまで前提条件に沿って分析していこう

第4回 ヒューマンエラーの場合に、よく使う表現

第3回 クレームについては3つの観点から

第2回 言い訳の「なぜ」は書かないこと!

第1回 主語はしっかり書こう!

▲ Page Top

執筆一覧

プロフィール

バナー:お問い合わせ

2020年度の言葉

8588

失敗の原因追究に管理職も入って、自ら改善策を出す

 

 皆さんは、失敗を当事者だけに関わる問題で済ましてはいないだろうか。

 

失敗に至ったいきさつをはっきりさせて、なぜ失敗が発生したのか掘り下げていくと、ほとんどの失敗は当事者の関わる問題だけでなく、業務全体あるいは管理職の関わる問題もあることに気づく。

 

  失敗というのは、会社や職場の脆弱な部分が、たまたま形になって表れてきたに過ぎない。

  優れた管理職ほど、部下の失敗を見て、自らが関わる問題にも気づき、すみやかに改めていく。

 

 管理職が自ら関わる問題に気づかず、失敗した当事者や関係者を攻めるのは論外である。

 

次回失敗しないためにはどうしたらよいか、管理職と当事者が一体になって、全員分の改善策を出すつもりで原因追究を進めることが大切だ。

 

 コロナ禍により新たな取り組みが始まった職場や企業も少なくない。新たな取り組みの中での失敗であればなおさら、失敗の当事者と管理職が一緒に考えていく。

 

 いち早く業務全体を変えていけるかどうかが、企業の生き残りの成否のカギを握ることはいうまでもない。

 

2020年8月12日 小倉 仁志

なぜなぜ分析ツール

インターネット上で使える「なぜなぜ分析ツール」を監修いたしました。「なぜなぜ分析」をより効率的に、効果的に実践することが可能となりました。

 

なぜなぜ分析ツール

※外部サイト